2012年10月10日水曜日

熱の流れ

 今年も水と光の祭りが始まった。
 さっそく夜一人でふらりと出かけてみたが、あまりの人の多さに圧倒された。
 私が今住んでいるこの韓国の地方都市は、普段はとても静かなのだが、このときばかりはもの凄い熱気に包まれる。
 有名な祭りで、テレビや新聞などで何度も紹介されていた。韓国全土から膨大な数の観光客が押し寄せてくる。また、たくさんの外国人観光客もやってくる。黒人や白人を多く見かけた。

 私は川沿い近くの小さなアパートに住んでいるため、祭り会場には歩いて行ける。メイン会場は河川敷になるため、川に沿って数キロにわたり屋台が出店し、複数のステージが設けられ、様々な催しがなされている。



 祭りは午前から始まり、夜中の2時まで行われている。
 先日祭り見物をし、夜10時くらいに帰宅したのだが、もの凄い数の人々がまだ祭りの会場に向かって歩いていた。つまり夜の10時から、まだまだ楽しむぞという人達がたくさんいるということだ。
 そして祭りの期間はなんと2週間。韓国人がどれだけパワーを持っているかが分かると思う。2週間もこの熱狂が続くのである。それも毎晩夜中の2時まで。みんな仕事とか学校とかどうなっているのだろうか?大丈夫なのだろうか?

 以前、ある語学番組でこんなことを言っていたのを思い出した。
「日本人は仕事のために家族を犠牲にする。韓国人は家族のために仕事を犠牲にする。」・・・なんだか分かるような気がした。家族や仲間で、今晩はとことん楽しむぞという熱気が伝わってくるのだ。



 ある晩、カン先生に誘われ祭りの会場を巡った。その後、屋台でマッコリを飲みながらいろいろなことを話していた。屋台といっても日本のような小さな屋台ではない。50人くらい入る巨大な屋台が、何軒も出店しているのだ。

 スンデ(豚の腸に豚の肉や血、春雨などを詰めたもの)をつまみに飲み続けていた。ふと気がつくともう夜の11時を過ぎている。そんな時間にも関わらず、子供連れの家族がたくさん川沿いを歩いている。中学生や高校生ぐらいの若者も楽しそうに射撃や輪投げなどをやっている。オイオイ、明日の学校は大丈夫なのか?もう帰らないと・・・。
 だが、そんなことを思っているのは私だけのようだ。

 屋台は深夜でも満員だ。よく食べ、よく飲み、大声で話している。そして笑顔だ。みんなに明日を気にする様子は一切なく、「今」を仲間や家族と大いに楽しむぞっていう熱気が伝わってくる。



 ところで、祭り会場をいろいろ巡っていて気づいたことがある。
 それはまず、食べ物屋が異常に多いことだ。これはまぁ頷ける。この国は「食べる」ということをものすごく大切にしている国だからだ。どんなに仕事が入っていても「食べる」ことは優先される。話の途中でも、「食事の時間だ。」ってことで、出かけることになる。全ては食べた後に始まる。つまり、食べなければ何も始まらないのだ。


 

 次に気づくのが、占い師や姓名判断をする者、それに似顔絵師がやたらと多いことだ。いったい何なんだっていうくらい、いたるところに店を構えている。そしてその一人一人にしっかりと客がついているから驚いてしまう。占い師の方はよく分からないが、似顔絵師達の腕は確かだと思った。どの絵もそっくりなのである。思わず見入ってしまう。
 もし家族で来ていたら、子供の似顔絵を描いてもらいたいところだ。似顔絵を描いてもらうことなんて、なかなかないだろうからなぁ。


 
 今、この街は熱い。そしてこれからもしばらく長い夜が続く。

 川面からの風が冷たくなってきた。この祭りが終わると秋真っ盛りになる。
 
 私の横では3人家族が川面に浮かぶ灯籠を眺めている。父親に抱かれた男の子はもう眠りそうだ。
 男の子の前髪が風に揺れていた。
 
 
 
 

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