2012年10月2日火曜日

韓国を食べる・その2


今現在、目には見えない圧迫感を感じながら生きている。
このあいだ「独島についての緊急愛国教育」が体育館で行われた。授業をとりやめ全校生徒が集まって「教育」を受けた。
  先週には、「独島教育ビデオ視聴」が各教室で行われた。そして「独島愛作文」の時間も設けられ、いずれも授業時間にそれらが行われた。授業より優先的にこれらの「教育」は行われている。
 はっきり言って居づらい。他の先生方が自分に気を遣ってくれているのがひしひしと伝わってくる。生徒も同様だ。「日本・日本人=悪」という映像を見せられた後に日本語の授業で私に出会うのだから当然だろう。

 以前、韓国史の公開授業を見学に行ったことがある。
 授業内容は「日本の植民地支配」であった。私は教室に足を踏み入れたことを少し後悔した。教室前方にあるモニターでは、様々な映像が映されていく。日本人がこの国の人々にどれほど残虐なことをしていたかという内容だ。たくさんの写真も提示される。
 生徒はその画面を黙ってじっと見つめていた。私の方をちらちらと見る生徒もいる。
 韓国史を教える女性教師は時々映像に対する解説を加えていたが、その映像を突然切ってしまった。私の存在をとても気にしていることが分かった。私がいると授業が進められないということが、その教員の表情からも窺われた。
 他の見学していた先生方も下を向いてどんどん退出していった。私はその場にいることが苦しかった。他の先生方が私に気を遣っているのが、その時にあらためて分かった。
 そのことがあって以来、私は「愛国教育」の場には意識的に足を運ばないようにしている。 

 
 その後、私にとって衝撃的なことが起こった。
 私が最も楽しみにしている場がなくなったのだ。その場とは日本語の放課後授業である。突然の廃止となった。これにはさすがに心が折れそうになった。自分が生徒と共に大切にしてきた部活動が突然活動停止になったようなものだ。
 「受講者数が少ないため。」というのがその理由だ。夏休み前までは「一人でも希望者がいれば放課後授業を行ってほしい。」と言われていたのだが・・・。
 
 この放課後授業では一年間様々な試みをしてきた。そして生徒達は驚くほどのスピードで日本語を習得していった。信頼関係をつくることができた生徒も何人もいる。残念だ。こんなに突然に・・・。
 今自分はここで必要とされていないということを、さすがに鈍感な私も感じることができた。
 それでも放課後授業を一番熱心に受けていたテミョン君とチョンミン君が職員室に来てくれた時は救われた気がした。今二人には時間を作って個人的に日本語を教えている。

 
 まぁいろいろとあるが、仕方ない。
 ところで昨日まで韓国は「秋夕(チュソク)」。日本のお盆のようなものだ。秋夕前日に地元の市場に行ってみたが、大混雑であった。ニュースでも帰省ラッシュで高速道路が大渋滞になっている様子が映し出されていた。街もたくさんの店が休みになっていた。
 
 久しぶりにみんな故郷に帰り、家族でのんびり過ごしているようだ。
 韓国の人々は本当に家族の時間を大切にする。どんなことよりもまず「家族」なのである。この家族意識のあまりの強さに、日本人である私は時として違和感を覚えることもある。だが、韓国人のとても素敵な面であると今では思っている。
 自分は今まで家族というものを本当に大切にしてきただろうかと考えさせられる。
 
 ところで、天気予報の女性も今はちゃんと韓服を着ている。こういうのってやっぱりいいよなぁ。
 
 さて今回も韓国で出会った美味かったものを少しばかり紹介しようと思います。 
 

 
石焼きピビンパム。
 まぁこれは韓国に来なくても、日本でけっこう食べたことがある人は多いと思う。家族でソウルへ行った時に食べた。有名店だったようで、とても美味しかった。だが、客が日本人ばかりでここは日本か?と思うほどであった。私が住んでいる街では「石焼き」は見かけない。しっかり混ぜて食べるべし。これについてくるスープがまた美味しいのだ。



 これは牛すじの煮込み。いや、骨付きカルビの煮込みだったか?キム先生に招待された時のもの。その時日本からの客人2人もいた。あの2人は風のように現れ、そして去って行った。
 肉がとろけるというのはこういうことをいうのだなぁと思った。それほどしっかりと煮込んであった。味付けは洋風で、つかの間、韓国の味から離れることができた。


 
 タスギタン。
 先輩に連れられて時々行く店。この泥のようなスープ。・・・本当に見た目は泥なんです。川で採れるタスギという貝からダシをとったスープである。この中にごはんをぶち込んで食べる。韓国はとにかく鍋料理やスープが美味いんだけど、これは私が好きなスープのベスト3には入ってくる。味は説明できない。体に優しい感じの味なんだけど、どう言葉で表現したらいいだろう?食べてみるしかないです。とりあえず一口どうぞ。そのスプーンを手に、さあどうぞ。
 
 
 
 
 いろんな魚(タラなど)を煮込んだスープ。
 これも先輩達に連れられいった店。私が今住んでいる街は川と海が近いため、とにかく魚料理が多い。刺身ももちろん美味しいんだけど、鍋でグツグツ煮込むとなんとも言えないダシが出て美味なのだ。これをみんなでつついて食べる。「みんなで一つのものを食べる。そうして家族のようにつき合う。」・・・これが韓国なのだ。
 
 
 
 職場には様々なところから食べ物が届けられる。お菓子や餅や果物が多い。保護者からのお礼とともに届けられることがほとんどだ。「おかげさまで~会社に合格することができました。ありがとうございます。」という感じで。そしてそれらが各机に配られる。私の机にも何かしらいつも置かれている。お供え物のように・・・。
 
 
 
 これは何だか分かりますか?職場のボス達に連れられて行った店で。
 左は豚の皮膚です。右は鶏の足先です。コラーゲンたっぷりの料理。これを焼くとなんとも言えない香ばしい香りが広がります。焼酎やビールが最高に合います。ただ韓国人でも苦手な人がいることが分かりました。私は全く大丈夫でしたが・・・。だけど鶏の足の方はものすごくリアルで食感も独特でした。爪はきちんと取ってあったけど・・・。
 
 
 
 アグウタン。
 私が最も好きなスープである。アンコウの煮込みスープである。スープの味もアンコウの身も絶妙である。グツグツと煮えたぎった鍋が運ばれてくる。これにビールを頼む。私が住む街にも美味しい店があって、先輩達に何度か連れて行ってもらったんだけど、私は釜山にあるこの店のアグウタンの方がレベルが高いと思っている。冬の夜、釜山駅周辺を長時間歩き回ってやっと見つけた店だ。確実に観光客は入らない。絶対にガイドブックには載らない。店の横を通っても、必ず通り過ぎる。それほど目立たない店なのだ。いつも地元の人しか来ていない。そして地元の人は美味い店を知っている。ちょっと風変わりなアジュンマがいる。観光客が来ないっていうのは本当に落ち着く。体の芯にじわーっと染みわたる鍋料理です。
 
 ちょっと今回は料理の臨場感を出すために巨大な写真にしてみました。お腹空きましたか?
 しっかり食べて、しっかり動いて、しっかり寝ましょう。いろいろあるけど何とか乗り越えていきましょう。お互いに。
 
秋ですね。稲が光っていました。黄金色の泉のようでした。
 
 
 

5 件のコメント:

ともこ さんのコメント...

健父さん、体に美味しい韓国のご飯をしっかり食べて、残りの派遣期間を元気に過ごしてくださいね。





健父 さんのコメント...

はい、そうですね。
最近いいことはなく、嫌な思いをすることの方が多いですが、なんとかやっていこうと思っております。
まぁこの国の人たちに食べさせてもらっているだけでもありがたいことですからね。
今日も感謝をして生きていきます。
あと半年、お互い頑張りましょう。

高橋 さんのコメント...

偉いな。
健ちゃん、君は実に偉いよ。

健 さんのコメント...

何が偉いのか分からないが・・・。

突然思い立って、この間2日ほど、絶食してみた。
タカハシ君、やっぱり食べられるっていうのはありがたいねぇ。

東京は世界中の食べ物を経験できるから羨ましいです。
だけど世界中の美味いものをきっとほとんど経験することなく、この世を去ることになるんだろうなぁ~。

家族と美味い飯食べてますか?

ところで村上春樹がノーベル文学賞を取りそうって本当ですか?
こちらでは韓国の詩人が取るんじゃないかなどとTVでやっていました。
その人が取ったら韓国文学界初だそうです。

高橋 さんのコメント...

 偉いってのは、腐らず、嘆かず、メシをきちんと食って、しっかり生活してるってことがさ。
 こちら、家族とうまいメシ食っています。
 春樹は、どうなんだろうか?ただし、イギリスのブックメーカーで予想第一位が春樹だそうです。